公開レクチャー
ご挨拶
博士論文の研究計画
「すべての兵士はアンバサダーか?:軍隊による文化交流と日米安全保障同盟」
在日米軍には70年以上もの歴史があり、今や軍属、配偶者、子供を含め、軍事に関係するアメリカ人約10万人が日本に暮らしている。この数字は、アメリカ人と日本人のコンタクトの多くが国家の暴力装置である軍隊を通して行われているということを示している。米軍基地は様々な文化交流イベントを通じて、日本人コミュニティとの良好な関係の維持に直接的にかかわる一方、武器や軍艦などを表に出し、アメリカの国益を脅かすものにはいつでも攻撃の用意があることを示している。
本研究の目的は、米軍がどのような文化交流の戦略を用いて、基地の外に暮らす人々の悩みや抵抗を抑えようとしているのかを理解することである。軍隊が組織する国際交流のイベントや空間が、基地内外の人々の生活にどのような影響を与え、どのような権力関係を形成するのかということにとくに注目する。軍人と民間人の関係、日本人と外国人の関係、そして日米関係そのものにアメリカの軍事力がどのように使われ、それにどのような抵抗がなされているのかを明らかにしたい。
本研究の予備調査として、2017年6月から8月まで、本州にある五ヶ所の米軍基地で、新人向けオリエンテーション等、基地内で行われる日本文化教育の参与観察を行い、参加者、オーガナイザー、講師等にインタビューを実施した。このフィールドワークを通じて、以下の三つの問いに重点を置きたいと考えている。第一に、米軍の「海外生活の困難さから兵士を守る」という強い意識はどのように彼らの距離感や特権意識を生み出しているのか。オリエンテーションの教育内容から見た日本人とは、自ら兵士を支援する役割を果たそうとするイメージであり、そうではない日本人は無視すべき少数派とされている。また、基地の司令官は「すべての兵士はアンバサダーでもある」と言いながら、日米同盟の歴史や政治的背景を兵士に理解させようとはしていない。第二に、文化はどのように「武器」とされているのか。軍隊の資料によれば、軍人の異文化の理解度が高ければ高いほど、その軍人はより効率的に敵を殺すことができる。このような理論に従えば、困っている兵士を助ける日本人ですら無意識に米軍のミッションの共謀者となり得ることになる。そして最後に、基地のフェンスが「アメリカ」と「日本」に空間を分断することが、入れる者と入れない者のアイデンティティ、行動、人間関係にどのような影響を及ぼしているのか。たとえば、本州の基地で働く日本人は「軍人」と「外人」を区別するだけでなく、自分と基地に入れない日本人をも区別する傾向にあった。
これらの問いに答えるため、米軍人と反基地運動が最も盛んな地域である沖縄において、1年間のフィールドワークを行うこととする。基地内の沖縄文化教育と英会話教室、老人ホーム等での兵士のボランティア活動、基地周辺の町の行事、反基地デモ等々、できる限り多くの地元の人々と軍人の間の国際交流・異文化理解の現場を調査し、参加者や関係者にインタビューを行う。従来の先行研究においては、国際政治としての日米同盟や基地の計画・建設が人々の環境や心理に与える影響についての調査はなされてきたが、在日米軍基地内にかかわる文化人類学はいまだ少なく、その主要な焦点は、反基地運動の参加者や兵士と付き合う日本人女性に当てられてきた。本研究では、これらの要素をすべて結び付け、日米同盟、両国の文化、県と政府の対立、基地内外の環境と個人の行動・関係との相互作用に光を当てる。
在日米軍には70年以上もの歴史があり、今や軍属、配偶者、子供を含め、軍事に関係するアメリカ人約10万人が日本に暮らしている。この数字は、アメリカ人と日本人のコンタクトの多くが国家の暴力装置である軍隊を通して行われているということを示している。米軍基地は様々な文化交流イベントを通じて、日本人コミュニティとの良好な関係の維持に直接的にかかわる一方、武器や軍艦などを表に出し、アメリカの国益を脅かすものにはいつでも攻撃の用意があることを示している。
本研究の目的は、米軍がどのような文化交流の戦略を用いて、基地の外に暮らす人々の悩みや抵抗を抑えようとしているのかを理解することである。軍隊が組織する国際交流のイベントや空間が、基地内外の人々の生活にどのような影響を与え、どのような権力関係を形成するのかということにとくに注目する。軍人と民間人の関係、日本人と外国人の関係、そして日米関係そのものにアメリカの軍事力がどのように使われ、それにどのような抵抗がなされているのかを明らかにしたい。
本研究の予備調査として、2017年6月から8月まで、本州にある五ヶ所の米軍基地で、新人向けオリエンテーション等、基地内で行われる日本文化教育の参与観察を行い、参加者、オーガナイザー、講師等にインタビューを実施した。このフィールドワークを通じて、以下の三つの問いに重点を置きたいと考えている。第一に、米軍の「海外生活の困難さから兵士を守る」という強い意識はどのように彼らの距離感や特権意識を生み出しているのか。オリエンテーションの教育内容から見た日本人とは、自ら兵士を支援する役割を果たそうとするイメージであり、そうではない日本人は無視すべき少数派とされている。また、基地の司令官は「すべての兵士はアンバサダーでもある」と言いながら、日米同盟の歴史や政治的背景を兵士に理解させようとはしていない。第二に、文化はどのように「武器」とされているのか。軍隊の資料によれば、軍人の異文化の理解度が高ければ高いほど、その軍人はより効率的に敵を殺すことができる。このような理論に従えば、困っている兵士を助ける日本人ですら無意識に米軍のミッションの共謀者となり得ることになる。そして最後に、基地のフェンスが「アメリカ」と「日本」に空間を分断することが、入れる者と入れない者のアイデンティティ、行動、人間関係にどのような影響を及ぼしているのか。たとえば、本州の基地で働く日本人は「軍人」と「外人」を区別するだけでなく、自分と基地に入れない日本人をも区別する傾向にあった。
これらの問いに答えるため、米軍人と反基地運動が最も盛んな地域である沖縄において、1年間のフィールドワークを行うこととする。基地内の沖縄文化教育と英会話教室、老人ホーム等での兵士のボランティア活動、基地周辺の町の行事、反基地デモ等々、できる限り多くの地元の人々と軍人の間の国際交流・異文化理解の現場を調査し、参加者や関係者にインタビューを行う。従来の先行研究においては、国際政治としての日米同盟や基地の計画・建設が人々の環境や心理に与える影響についての調査はなされてきたが、在日米軍基地内にかかわる文化人類学はいまだ少なく、その主要な焦点は、反基地運動の参加者や兵士と付き合う日本人女性に当てられてきた。本研究では、これらの要素をすべて結び付け、日米同盟、両国の文化、県と政府の対立、基地内外の環境と個人の行動・関係との相互作用に光を当てる。
履歴
2003年:ロングアイランド大学グローバル校(元:フレンズワールドプログラム)卒業
2010年:ハワイ大学マノア校 アジア学科 修士号
2011~15年:レイクランド大学ジャパンキャンパス社会学准教授、英語研修課程プログラムコーディネーター
2015年~現在:カリフォルニア大学サンタバーバラ校 東アジア言語文化研究学科 博士課程
2018~19年:平成30年度国際交流基金日本研究フェロー
2021~22年:令和4年度日本科学技術振興会短期研究フェロー
2010年:ハワイ大学マノア校 アジア学科 修士号
2011~15年:レイクランド大学ジャパンキャンパス社会学准教授、英語研修課程プログラムコーディネーター
2015年~現在:カリフォルニア大学サンタバーバラ校 東アジア言語文化研究学科 博士課程
2018~19年:平成30年度国際交流基金日本研究フェロー
2021~22年:令和4年度日本科学技術振興会短期研究フェロー
講演(日本語)
2019年7月26日、8月27日:沖縄大学 法経学科 春田吉備彦ゼミ “在日米軍の「サムライファンタジー」と「子供扱い」:日本文化を変えていく軍事的男性性”
2019年7月3日:一橋大学 ジェンダー社会科学研究センター CGraSS 公開レクチャー・シリーズ 第47回 “「サムライファンタジー」と「子供扱い」:日本文化を利用した在日米兵の軍事的男性性”(ポスターはこちら)
2019年7月3日:一橋大学 ジェンダー社会科学研究センター CGraSS 公開レクチャー・シリーズ 第47回 “「サムライファンタジー」と「子供扱い」:日本文化を利用した在日米兵の軍事的男性性”(ポスターはこちら)
動画(日本語)
「グローバル教育の中で日本を教える方法」【日本語字幕】
レイクランド大学 ジャパン・キャンパス
2014年5月17日 |
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